島本森のたより


   2012年度第2号  2012年6月発行

平成23年度近畿地区森づくり活動コ-ディネ-タ-養成ブロック研修

参 加 報 告

  2012.3.2  金山 勉 



期間:2012年2月23日~25日(3日間)

場所:滋賀県守山市及び高月町

主催:(財)滋賀県緑化推進会 


島本森のクラブを代表して、研修に参加してきましたので、概要を報告します。

 この研修は、公益社団法人国土緑化推進機構の支援により、近畿地区の各県緑化推進会が毎年持ち回りで、実施している研修です。来年度は三重県が担当となります。

 参加者は、近畿地区のNPO、NGO、緑化に関心ある企業など28名であった。

 研修内容は以下に示すとおり、森づくりの理解と参加者の交流に配慮されたものであった。研修終了後、修了証書をいただきました。


2月23日(初日):

基調講演「緑・森づくりとボランティアについて」       滋賀県立大学名誉教授 荻野和彦

 ・震災被害を受けた陸前高田の防潮林では、木が残るかどうかは津波の波力と防潮林力の
  関係であり、たまたま残った木も「奇跡の一本松」などと呼ばれたが枯れてし
まった。
  自然は人の過剰な思い入れを拒絶する、このようなことを意識しながら森
づくりを進め
  る必要がある。

 ・人は山から多くの恵みを受けている。奥山では狩猟、山菜採り、炭焼きなど、里山では
  薪採り、木灰(カリ肥料)などを調達してきた。また、地域には地域特有の遺
伝的な特
  性が保たれており、種苗の移動を行う場合には、注意を要する。例えば、
オモテスギ(
  吉野杉等)とウラスギ(秋田杉等)では、生育状況が異なり、オモテス
ギを裏日本の秋田
  など東北に持っていってもうまく育たない。遺伝的なかく乱を招
くだけである。

・森づくりは、人が森林をつくり、森林が人をつくる相互作用系、森林の社会生態系  
  により成り立っている。四手井綱英先生が言い遺した「森林のことは森林に聞け」
とい
  うように森づくりは森を見ながら(聞きながら)人がやることと定義づけられ
る。

 ・森づくりは、気候、土壌、植生などの自然の生態秩序や価値、制度、政策、歴史など社
  会的条件の両面がある。社会的条件として求められることは、①森の価値を知
って、目
  的をはっきりしておくこと、②ここに至るまでの森林の扱い、とくに制度、
政策を知っ
  ておくこと、③人的、金銭的な費用を推算しておくこと、である。

 ・最後に、ボランティアの心得として、①森のことを見る(聞く)力をつける、②私的な趣
  味に終わるのではなく、独自に森林の社会生態系の課題を意識し、取り組むこ
とが強調
  された。
 

事例紹介「滋賀県とアジアの巨木保全活動について」
  関西大学・神戸女子大学 李春子

・社の文化は、地域風土の風景の一部であり、鎮守の杜には老樹、巨木が多く、様々な歴史とともに人々が守ってきた文化で、東アジアに広く共通する。


・沖縄県、滋賀県、韓国、台湾の老樹保全活動について紹介され、韓国・台湾は単独の老樹 、神木が保全対象となっている。
   

・滋賀県にはケヤキや杉、ムクなどの老木・巨木を中心とする野神信仰や鎮守の杜がある。


・近年の近代化、都市化の中で、地域の杜
の文化は危機的状況となっている。従来の信仰に基づく地域社会での維持管理が変化し、保全が難しくなってきている。老巨樹の持続的保全には、地域の人々の理解や行政の支援、社会全体の認識が必要であると主張された。

   渡岸寺の野神ケヤキ 
交流会「参加団体の活動紹介など」
  ファシリテーター 近江富士花緑公園 小田貴志

・今回の研修の概要説明の後、交流を深めるため2人一組になり、3分程度互いに活動紹介を行った。これを入れ替わりながら、繰り返した。このことにより、交流がわずかながら深まったように思える。
    渡岸寺の野神ケヤキ 辻宏朗氏 
      柏原の野神ケヤキ 

2月24日(2日目):
視 察「長浜市高月町内で巨木保全活動について」     滋賀の名木を訪ねる会 辻宏朗
                                       一本杉の会      笠原祐

・午前中は、高月町渡岸寺の野神ケヤキ、柏原の野神ケヤキ、唐川の一本杉の巨木を見学し、保全活動等の説明を受けた。高月町は、高時川の流域であり、土地が肥沃であるためケヤキが多いとのことであった。滋賀県内の巨樹・巨木は1200本ほどが確認されている。 
 
    唐川の一本杉 

視 察「びわこ地球市民の森で協働の森づくりについて」    びわこ地球市民の森    小井克己
                                   びわこ森づくりサポーター 今井紘一

・守山市の野洲川南流の42.5haにおける森づくり活動の説明を受けたあと、現地を案内していただいた。2001年に開園後、2011年までに企業、団体、個人などのボランティア39,300人によ142,000本の苗木が植えられ、森づくりが進められている。  
        
           びわこ地球市民の森     びわこ地球市民の森(爬虫類用石積み) 

2月25日(3日目):

ワ-クショップ「今後の活動にむけて」        ファシリテーター  小田貴志

・参加者の活動における悩み、可能性等を発表し、議論した。悩みとしては、活動時の女性トイレの問題、活動資金、高齢化対策などが話題としてあげられた。

・コーディネ-タ-の役割、使命では、6人ほどのグル-プに分かれ、キャッチコピ-を作成し、グループごとに発表した。発表されたキャッチコピ-は、①里山復元、②輪を拡げる-実行・企画力-森林イベント、③森づくりを通じて人の心に樹(気)を植えて、育てる人、④知っている人を知っている、⑤楽しく安全になどであった。    

               
                           ワ-クショップ「今後の活動にむけて」  
 
以上